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韓国「日当30万ウォンアルバイトの落とし穴」

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高収入を餌に外車購入誘導…被害回復困難

 

就職サイトを見る目が止まった。「日当30万ウォン」と書かれた求人だった。しかし、高収入の割には条件ハードルが低い。運転免許が唯一の必要条件であった。初期費用がなく、「気軽に長く勤めることができる人募集」とうたってある。勤務時間は午前9時から午後6時まで。1日の業務を終えると、当日の夕方には30万ウォンが入金される。さらには交通費や食事代まで提供されるという。月の半分だけ勤務しても450万ウォンもの収入を得ることができる計算だ。

 

オンラインで応募したところ、10分で連絡がきた。面接の詳細連絡だった。求人上、勤務地は仁川空港とされていたが、担当者が伝えた面接場所は京畿道の議政府市だった。履歴書と運転免許証を準備するようにとのことだった。

 

翌日、面接のため議政府市にあるオフィスに出向いた。オフィスには看板がなかった。担当者が持って来た採用マニュアルに書かれた社名は、就職サイトに記載されたものとは違った。壁にかけられたボードには、ランボルギーニ、ベンツ、BMWなど高級輸入車モデルがぎっしりと書かれていた。

 

「ローン限度額がいくらまで出るのか照会からお願いします」ローン履歴を聞いていた担当者が、面倒そうに切り出した。理由を尋ねたところ、仕事をするには融資が必要だと言う。この業者が明らかにした「日当30万ウォン」就職過程は以下の通りだった。

 

業務は海外VIP儀典とのことだ。ゴルフ場や会議場所までの運転が主な業務である。そのためにはVIPにふさわしい「高級車」が必須だ。国産車は取り扱わない。最低5000万ウォンから1億ウォン以上の高級輸入車に限定されている。ベンツやBMWが主な車種だ。業務車両は求職者が買わなければならない。購入資金は、業者が紹介するローン会社を通じて準備することになる。購入車両の車種や年式は、求職者の信用状態に応じて決定される。

 

当初「コストがかからない」としていた説明とは異なり、割賦金と保険料を負担しなければならないのかと尋ねると、「勤務する間は会社で負担する」という答えが返ってきた。通帳に「日当」とは別に、割賦金と保険料を直接入金すると言う。ただし、仕事を辞めれば、割賦金と保険料の支援も行うことができないと述べた。仕事をしたくても訪問者が途切れ、借金を抱え込むことになるのではと心配すると「景気好調であるため、そのようなことはない」と言い切った。仕事を辞めたければ、中古車市場に車を売れば十分だとした。車売買斡旋も可能だと強調した。

 

同業者がサイトごとに異なる名前を使用

 

「日当30万ウォン」フレーズは、求職者を呼び集める力がある。就活生をはじめ、コロナウイルスの影響により解雇された仁川空港の輸送担当者、サービス終了により職を失ったドライバーなど運転経歴求職者をターゲットにしている。実際、この日の面接30分の間にも求人を見て訪れた応募者が頻繁にオフィスに入って来た。この日、オフィス前で会ったソウルの大学生パク氏(25)は、「平昌オリンピックの時に、似たようなアルバイト経験があり応募した」とし「ローン限度を照会したところ、学生であるせいか大した額ではなかった。それが分かった途端に態度が変わり、説明がほとんどなくなったため、そのままオフィスを出てきた」と述べた。また「“この時世で1日30万ウォン、月500万ウォン稼ぐことができる所があるだろうか?募集人数はあと1名”という文言に釣られて面接を受けた」と述べた。

 

仁川空港サプライヤーから解雇され、求職中のキム氏(42)も、応募者の1人だった。イ氏は「説明を聞いて“これは詐欺だ”と確信し、すぐにオフィスを出た」とし「まったく同じ業者がサイトごとに異なる名前で広告を出している」と述べた。

 

被害者に残されたのは高金利の割賦金のみ

 

何よりも、宅配の仕事をするには、貨物輸送従事者の資格を取得しなければならない。資格のない輸送行為は違法である。しかし、業者は資格がなくても問題ないとして車両購入を強要する。資格は働きながらゆっくり取ればいいと言う業者側の説明を聞いて、購入契約に至った者もいる。

 

実際、類似業者で被害に遭ったイ氏は、契約内容が違うと業者に契約破棄を求めたが、業者は5ヶ月目になっても「解決する」という言葉だけを繰り返すだけだ。その間に業者は社名を変更した。イ氏は「求人サイトや書類にも大手企業のロゴが埋め込まれており、オフィスにあるテレビには大手企業のCM映像を流してある。“まさか大手企業で詐欺まがいのことをするだろうか”と思い契約した」とした。

 

イ氏のような被害事例はコロナウイルス以降、宅配市場において急増している。宅配業就職詐欺の相談カフェ運営者であるハン氏は、「コロナウイルスにより物流市場が活発化し、多くの人が宅配業に飛び込んでいる」とし「それだけ被害者も急増している。被害予防動画まで作ってアップロードしているが、詐欺被害を訴える人は増えている」と述べた。

 

このような詐欺被害の場合、車両の購入を誘導した業者、ローン会社、誰も責任を負わない。被害者が、詐欺罪で業者を告訴・告発しても業者側は「当事者が望んで契約したものだ」と主張する。実際、契約書はあっても、詐欺を立証する資料がないため、ほとんどの事件が「容疑なしの処分」に終わる。

 

韓国政府も、このような詐欺の被害実態を知っている。しかし、規制する方法がないという理由から制御できずにいる状態だ。国土部の関係者は、「個人がブローカーにだまされず、よく調べて契約することが重要である」とし「採用サイトにおける虚偽誇大広告の問題は、公正取引委員会や消費者保護院所管」と述べた。