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覆される弱肉強食のカタルシス…ドラマ『梨泰院クラス』興行の秘訣は?

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JTBCドラマ『梨泰院クラス』が熱く盛り上がっている。去る1月31日、視聴率4.98%で始まり、毎回自己最高視聴率を塗り替え、10話目では14.76%を記録した。全16部作である『梨泰院クラス』は、累積読者数1301万人、閲覧数3億3000件にものぼる同名ウェプトゥーンが原作だ。主人公パク・セロイ(パク・ソジュン)の敵であるチャンガグループの失墜など、爽快な復讐劇のハイライトが残っており、今後の勢いもとどまることを知らないだろう。ここでは『梨泰院クラス』の人気の秘訣について考察してみる。

 

覆される弱肉強食のカタルシス

 

弱肉強食。これは『梨泰院クラス』の悪役であるチャンガグループのチャン・デヒ会長(ユ・ジェミョン)が一番好きな四字熟語だ。弱い者が強い者に受け入れられるしかない生態系の秩序が『梨泰院クラス』で痛快にひっくり返る。

 

パク・セロイは中卒の前科者だ。校内暴力の主犯であるチャンガグループ後継者チャン・グニョン(アン・ボヒョン)を殴り、転校したその日に退学させられる。その後、セロイの父がグニョンのオートバイでに轢かれて死亡すると、今度はグニョンを暴行した罪により、セロイは殺人未遂前科者になってしまう。信念一つで梨泰院に店「タンバム」を開き、チャンガグループに復讐してゆくのが『梨泰院クラス』のストーリーだ。

 

先月28日、記者会見でユ・ジェミョンは「厳しい時代に、セロイという青年が見せてくれる格好良さ、苦難と逆境を乗り越える覇気溢れる姿が多くの共感を得ているのだろう」と人気の秘訣を語った。

 

男女の立場が逆転するのも『梨泰院クラス』の特徴だ。セロイの復讐劇を完成させるのは、20歳のマネージャー、チョ・イソ(キム・ダミ)だ。営業不振のタンバムを繁盛店へと変貌させただけでなく、チャン・グニョンにひき逃げ事故を自白させて刑務所送りにしてしまう。やがてパク・セロイを愛するようになり「その夢、叶えて差し上げます、社長」と告げるシーンは視聴者に大きな印象を残すだろう。

 

優しい復讐劇のファンタジー

 

仇を取るという復讐劇がこんなにも優しくなるのかと思うほど、セロイは正しい道だけを行く。刑務所で出会った元暴力団のチェ・スングォン(リュ・ギョンス)をホールスタッフに採用して新たな人生を歩める機会を与え、料理の腕前がないトランスジェンダーのシェフ、マ・ヒョニ(イ・ジュヨン)には給料を2倍渡して2倍努力するようにと告げる。また、チャンガグループ側の人間であり、セロイの初恋であるオ・スア(クォン・ナラ)が苦しんでいる時には「人生に誠実だっただけであって、間違ったことは一つもない」と慰める。常に損得より人を先に考える心の持ち主なのだ。

 

主人公がこのように優しく、やられてばかりだと「さつまいもドラマ(※)」になる確率が大きいが『梨泰院クラス』は違う。高校の時、チャン・グニョンにいじめられ、パク・セロイ退学のきっかけになってしまったイ・ホジン(イ・ダウィッ)が韓国大学の経営学科を卒業し、有能なファンドマネージャーになってパク・セロイを助けるなど、周囲の協力者たちの活躍のおかげである。パク・セロイが蒔いてきた良い種が一つずつ実を結ぶ。『梨泰院クラス』における成功は、正当法で信念を守り貫くことによる成功である。不条理な世の中で挫折を繰り返し味わってきた一市民である視聴者にとっては、この上なく甘いファンタジーだろう。

 

※さつまいもを水分なしで食べ続けて喉に詰まる感覚を、ドラマの進展が遅かったり、主人公が災難に遭ってばかりだったりして、視聴者がもどかしく感じる心情の例え。

 

パク・ソジュン+α、キャスティングの魔力

 

原作がメガヒットウェブトゥーンである上、原作作家がドラマ脚本まで書いているため、ドラマの流れは、すでに知られている。ストーリーの力だけでは興行には限界があるが、俳優たちによるキャラクターカスタマイズの演技が作品に命を吹き込んでいる。

 

パク・ソジュンはヘアスタイルから完璧な「少女漫画から飛び出したイケメン」を見せ、新人キム・ダミも情熱と冷静の間を行き来する千の顔でサイコパスのチョ・イソを見事に演じている。

 

悪役の「狂った」演技力も高視聴率の牽引者である。特にユ・ジェミョンは1日の放送だけで、会長の座を守るために息子までを欺く非情な父親の演技で「歴代級悪役」という評価を得た。「アホ」キャラクターのチャン・グニョンを演じるアン・ボヒョンの活躍も目立つ。無能で小心者のチャン・グニョンの情けない心情を余すところなく表現するアン・ボヒョンの表情演技は、パク・セロイの復讐劇を痛快にさせる。ジョン・ドクヒョン大衆文化評論家は「復讐劇の中心軸は主人公と悪役の間の対決構図だ。このとき悪役が非常に強力だと、視聴者が見るのが辛くなったりもする。これをアン・ボヒョンが「やられる悪役」として所々緊張を解いてくれる役割をよくこなしている。新人俳優として驚いた」と分析した。